追憶のエデン
*
「気が付いた?」
目を覚ますと心配気にこちら見下ろす渉さんの顔が直ぐ側にあった。
「起き上がれそう?それともまだ寝とく?」
「起き…る……。」
「そう。手、貸すよ。」
肩の下に腕を入れられ、ゆっくりと上半身を抱き抱える様に起こされれば、回された肩はそのままに渉さんの唇があたしの唇と重ねられた。
「…ぅん…っ…」
身を捩って拒むが、余計強く抱締められ、重ねるだけだった唇は、舌で無理矢理抉じ開けられた事により深く絡み付けられる。逃げても絡められる舌と、酸素すらも奪っていく程の激しい口付けは止まることを知らず、徐々にくちゅりと水音を含み、時折漏れる甘い声と互いの荒くなる呼吸音が耳に響く。
「放して、んっ…」
「何で?やっと会えたのに…はっ…ぅんん…駄、目…舌…絡めて?…はぁ…ん…ッ」
即すように唇を舐められ、上顎、下顎を愛撫する舌に身体が反応するのが悔しい。それでも抵抗するように口腔内に差し込まれた彼の舌から逃げれば、舌を吸い上げられ、そのまま舌裏をねっとりと舐め上げられる。
頭がふわふわと麻痺させるような感覚に溺れそうになったその時、肩に回された腕とは反対の腰に置かれた掌が上に上がるのを感じ、一瞬で頭が冷え、思い切り渉さんの胸を押し返す。すると彼自身予想外だったのか二人の間に距離を取る事が出来た。
「嫌ッ!」
ハァハァと乱れる呼吸が落ち着く間もなく、渉さんを睨み付けれるが、僅かに下を向いているのか髪に隠れてその表情は伺えなかった。
「何で拒むんだよ?いや、何を拒む必要があるんだ?だっておまえは俺の恋人じゃないか。
それとも何?あいつに…あの堕天使なんかに惚れたっていうのか?」
「…ぃゃ…来なぃ、で…」
今まで見た事ない渉さんの雰囲気に、頭の中で警戒音が鳴り響けば、足の先から徐々に小刻みに震え始める。
ギシ――
ベッドのスプリングが軋み、マットレスが沈む。離した筈がまた詰められてしまった二人の距離。
「そんなの許さない。未羽は…イヴは…俺のもの、なんだよ――。」
「嫌ぁぁぁぁああぁぁ!」