追憶のエデン
*





ジャラ――



「ぅ、ん……けほっ…」


身体が鉛の様に重く、何だかあちこち痛い。それに喉もカサついて乾いているのが原因なのか少し痛い気がする。


「けほっ…ぅ…喉、痛ぁ……ん?」


喉元へと手をやるとジャラリと金属の引きずる音と腕に掛かる重みを感じ、ぼやけた頭を現実へと戻す。
そして感じた仰向けのまま、違和感のする手首を顔の前へと持って来れば、鈍い金属が黒く光、手枷が嵌められ、繋がれた鎖の先は何処かへ繋がっている様だった。

(何で、こんなものが?)

繋がった先を見ようと身体を少し動かすと今度は足首にも手首と同じ重みがあるのを感じ、ハッとする。


先程の行為で患った身体の痛みと怠さを我慢し、緩慢な動きで上半身を起こし掛けられたシーツを捲れば、両足には足枷が嵌められ、両手と両足の自由を制限されている事を知る。



「あ、未羽、起きたのか?身体、平気?
久しぶりだったし、未羽に無理させた…。ごめんな。」



ガチャリと音を立て薄暗い部屋に光が入り込めば、渉さんが部屋に戻って来た。
彼の足は真っ直ぐにあたしの方へと向けられており、直ぐにベッドが沈むのが分かった。
そしておもむろにあたしの髪を軽く梳くと、目元に触れるだけのキスを落とす。


「……どういうつもり?」


「ちょっと激しく抱いちゃった事なら、悪かったって思ってるよ。虐め過ぎた…ごめんな。」


そう言って今度は頬にキスが落とされれば、握り締めていたシーツに力を込めながら、押し込めている苛立ちを紛らわせた。


「でも…あんな風に乱れる未羽は…すごく色っぽくて、壊したくなるくらい可愛かった。」


甘く艶めいた声音で吐息を混ぜながら囁くように言葉を紡ぎ、渉さんの唇が近付いてくる。


「――止めてッ!」


思い切り渉さんを突き飛ばし、精一杯の力で拒めば、ジャラリと空しい音が響き、驚きで目を見開いて唖然とする渉さんがいた。しかし離れたのは一瞬で、腕を掴まれ、腕が痛んだ。
< 103 / 114 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop