追憶のエデン

Episode11

「ルキフェル様！落ち着いて下さい！」


「離せッ！オロバス！！未羽が、神界の奴に連れて行かれたんだぞ！？」


「ルキフェル様ッッ！！」


城内に響き渡る程の慟哭にも似たルキフェルの声は焦燥感が募れば募る程、それは荒々しくなっていった。



森の鎮圧を済ませオロバスを伴って城へと帰還してみれば、城内は混乱に満ち、自室へと急いで来てみれば、壁は衝撃と共に一部分は崩れ落ち、床とドアもボロボロの状態で部屋も散乱していた。
そして気を失っていた兵士とメイドに話を聞けば、未羽は突然人が変わったかのように振舞い、一人で出て行ったという。


「ねぇ、オロバス。僕に命令するなんて何時から君はそんなに偉くなったの？
未羽が居なくなったのに何で行っちゃ駄目なの？」


「申し訳ございません。しかしルキフェル様、主の誤った判断を是正するよう諌言するのも私の役目で御座います故。これは彼女の問題だけではないという事をご理解下さい。」


いつも無表情のオロバスの表情が一瞬、悲痛に歪むが、直ぐに表情を失くし、ルキフェルの目をしっかりと見つめ、凛とした声で進言した。


「…分かってる…分かってるよ…でも未羽を早く助けなくちゃ行けないんだ…また…壊されちゃう前に……。」


ルキフェルは俯きその表情は伺えないが、ぽつりぽつりと漏らされる声が、オロバスにも嫌な記憶を思い出させ、内心舌打ちをする。




「オロバス…みんなをこの城に集めてくれないかな？」


「――Yes, Your Majesty.」





*





「未―羽っ！やっと起きたんだ？ホントおまえは朝に弱いんだな。」


「あれぇ？渉さんだぁ。ってそんなにあたし寝てたの？」


「寝てた。もうお昼前だぞ？」


ちょっと呆れ顔の渉さんにおでこをツンと突かれ、誤魔化す様に腕に抱きついて可愛く甘える様に笑えば、「なーに笑ってんの。」と呆れた声の中にも優しさが見える笑い声がした。