追憶のエデン
「実は…アダムが既に転生していた。しかも今回の転生で未羽の恋人という立場にまでなっていた。」
「まさか…。」
「あぁ、察しがいいね、ベルゼビュート…この喧嘩にはきっとアダムも関わっていると思うよ。」
皆の視線と動きが止まり、頬杖をつき少し俯き加減で鼻で嘲笑う様に答えたルキフェルがその様子を目を細め、上目使いで眺めると、また視線を落とし、作戦図の上に置かれていた白いナイトのチェスの駒を指先でくるくると机の上で回してみせた。
「じゃあ、ヤハウェは……。」
重い空気の中、マモンは尋ねる様にルキフェルに視線を向ければ、ルキフェルはちらりと目線だけ合わせた。
「僕の予想だと…グレー、かな?
でもね、そんな事どうでもいいんだ。あいつが関わっていようと、いなかろうと。だって僕らに喧嘩を売ったことに間違いないだろう?
だからね…やろうよ?――せ ん そ う。クスッ」
「めんどいけど、俺も前から気に入らなかったし、大将がそう言うなら、いいんじゃない?」
「私もベルフェゴールの意見に相違はありません。今こそアレらを根絶やしにするいい機会です。」
「マモン君怖ぁ~い。くふっ
でもぉ、ボクもあいつらの考えとか虫唾が走るんだよね。だからボクも、さ ん せ い っ!」
「それじゃぁ…早速、俺の可愛いあの子たちに、召集、かけるね。」
皆の意見が一致し、重苦しい空気から、残虐な笑い声が次々と言葉と共に上がれば、オロバスがルキフェルに声を掛けた。
「命令だ。神界の殲滅作戦に入る。よって固き血の盟約の名の許にお前達はこれより『煉獄の大罪』に戻り、僕にその命を捧げろ。違える事は死に値する。」
『はっ!!!!』
皆、椅子から立ち上がり、ルキフェルに向かって忠誠を誓う様に、お辞儀をすれば、空気がピンと張り詰めた。
――クスッ
「神界なんか、壊しちゃえ。……待っていて、未羽…僕が、絶対助けてあげる……。」
――バキッ!
一つの炎が、じわじわと全てを焼き払う大火へと変わろうとしている。
そしてそれが現実の未来へと変わるまであと少し。
粉々に砕け散ったナイトと、その手に隠し持っていたのは――それが彼らの答え。