追憶のエデン
金色の瞳は全てを当然知っているだろう。
チラリと視線を先程まで浮き足立っていた男に向けると、また視線を戻し、ゆっくりと虚空を見つめ、口を開く。



「おまえは知ってるか?ただの傀儡でしかない存在の奴等の慟哭がどんな色なのか。」



「いえ。」


「だろーな。今のおまえに解る筈がねぇ。」


「何が仰りたい?」


金色の瞳が射抜く様に、鋭く男の視線を捕える。



「せぇーぜぇ、足掻く事だな。」



射抜かれた男の瞳に、どす黒い闇が揺らめき、先程まで纏っていた空気が殺気に変わる。


そして男の殺気に気付いたのか、金色の瞳の男は、弧を描く様に美しく瞳を細め、クスリと小さく笑うと、男の方へと歩みを進め始めた。



「俺を退屈させない程度には、楽しませてくれるんだろ?ははっ」



すれ違いざまに、その男にしか聞こえない声で、嘲笑う様に告げる。


金色の瞳の男が去った後には、ギリっと奥歯を鳴らし、拳に力を込め過ぎたせいか、微かにそこから血の臭いをさせたまま、立ち尽くす男が1人残されていた。




*




「で、一応聞いておくか。ミカエル、戦況は?被害はどれくらい出ている?」



頬杖をつき、玉座に気怠げに座る金色の瞳を持つ、神界の王。
そして彼の玉座よりも3段程下がった場所で平伏すのは、金の甲冑を身に纏った大きな白い翼を持つ、長く燃える様な赤い髪を一つに高い位置に結わえた、鋭利な赤い瞳の男、殲天使ミカエルであった。



「はい。敵は神門を撃破。門番の兵士が消滅させられました。そして悪魔達は軍を率いて最南端の街へと駒を進めている模様で、被害はまだ神門以外は出ておりません。しかしこの進行具合ですと、明日には最南端の街に辿り着くと思われます。敵軍はルキフェルを筆頭に、煉獄の大罪、蠅騎士団、その構成は前回よりも構成員が増えており、戦力の程は未だ不明。また確認されたアンデッドの軍勢は次々に数を増やしており、こちらも詳細は不明です。」


「へぇ。成長してやがんじゃねぇか。面白ぇ。」
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