追憶のエデン

「ヤハウェ様。采配は如何に?」



「……アダムにこの戦いの指揮官に任命しろ。」



「……恐れ入りますが、気は確かでしょうか?」


余り表情に変化はないものの、ミカエルのその顔には僅かに戸惑いの色が伺える。



「あいつの部隊には禁軍があるのを、おまえは知っているか?」



「存在は存じておりましたが、詳細までは……。」


「アダムを隊長とした禁軍は悪魔専用ってやつだ。詳しくは見てりゃ、そのうち嫌でも分かる。
……ま、それでだ。神軍と一緒にこの先、出陣させようと思っている。」


ヤハウェの言葉の後に続いた、沈黙。
そしてその沈黙を破ったのもヤハウェの言葉だった。



「それと、これは密命だ。おまえはアダムを見張れ。そしてあいつに気取られねぇように、俺に全てを報告して欲しい。」



地面を映していたミカエルの瞳がヤハウェへと向き、彼の真意を伺う様に真っ直ぐに見つめた後、何かを感じ取ったのかミカエルは居住まいを正し、胸に拳を宛がうと、たっぷりと間を使い、視線はヤハウェを捕らえたまま凛とした声音で口を開いた。


「畏まりました。貴方様の仰せのままに。」


そんなミカエルの瞳をじっとヤハウェは見つめると、満足気に口元と目元に弧を描いていく。
そしてミカエルに期待の言葉を掛けると、ミカエルは誇らしげな表情を浮かべ、礼儀正しくヤハウェの許を後にした。



一気に静寂に包まれた王室。
だだっ広い空間に残されたヤハウェは、尚も口元と目元に笑みを浮かべたまま、あたかも誰かがそこに居るかのように虚空に向かって話しかけ始めた。



「俺にはもうどうでもいいんだ……なぁ、おまえは今、笑ってるか?…それとも笑わせられてる、の方か?……もうすぐだから…もう少しだけ、待っててくれ。……ははっ…心配すんな。俺が何度でも創り直してやるから、おまえは安心して壊れてろ――。」
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