追憶のエデン
石造りの建物に石畳の道。街全体がバロック様式で統一されているようで、それはまるで一見ヨーロッパの何処かの街の様だと思った。
おしゃれで統一性のある外観。その一つ一つから零れる灯りと、看板を照らすスポットライトやネオン、そして多くの街灯で夜だと感じさせない程キラキラと輝いて明るいため、多くの悪魔達で街は賑わっており、活気溢れる大都会だった。


あたし達は一軒のカフェに入り、そのお店自慢のベリーとバニラアイスが添えられたパンケーキと紅茶、そしてコーヒーを頼んだ。
店内はカップルや女の子達で溢れかえってるあたりかなりの人気店なんだろう。
何せ運ばれてきたパンケーキのデコレーションの仕方といい食器といい、かなり凝っているため、お洒落ですごく可愛い。


「美味しい…!!」


甘さも程良く、ベリーソースの甘酸っぱさとアイスとの絶妙なバランスの良さは人間界の物よりも遥かに美味しく、幸せな気分になる。


「ルキフェルは本当に食べなくていいの?」


「僕も食べていいの?」


じゃぁ…ルキフェルの綺麗な指が伸びてくる。


「うん、美味しいね。ご馳走様。」


ルキフェルはあたしの口元についていたクリームを指で拭うと自分の口へと運んで、悪戯が成功した子供みたいに笑う。悔しいけどドキッとした。


いつもと違う場所。解放感。そして何よりルキフェルの今日の服装はどう見てもあたしが知ってる様な普通の男の人と同じだったから、油断してしまうのかもしれない。


普段の彼は真っ黒で上質な生地に、金の刺繍と飾りがついた軍服のような、フロックコートのような裾が燕尾になっている王子様のような服装が印象的だ。
でも今日は白のシャツに黒のストールと細身のボトムズ、グレーのジャケットに、ダークブラウンのブーツ。どれもシンプルだけどシルエットがとても綺麗でルキフェルのスタイルの良さを引き立たせている。


(こうして改めてみるとすっごくかっこいいっていうか、本当に綺麗な男の人だよね。)



「どうかした?」


「別になんでもありません。」


「ねぇ、その敬語やめない?なんかすっごく他人行儀っていうか……」


「だって他人じゃないですか。」
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