追憶のエデン
一人でいつもの自室に戻り、バルコニーに出て空に浮かぶ白い月を眺める。そしてこの世界で見ているこの月は、あたしが今までいた世界と同じ月なんだろうか、という疑問を抱いていた。
ルキフェルはこの空間を創ったと言った。しかしあの日、イスペラディティアの街にも同じ月が浮かんでいた。それじゃあ、どれがイミテーションであって、どれがイミテーションじゃないんだろう。――それとも全部本物なんだろうか。
(みんなに会いたいな……)
「……渉さん…」
「何で、僕以外の男の事を想って、その口から僕じゃない名前が紡がれるの?」
今までここに無かった温もりに身体を拘束され、切なげな声が耳元から聞こえた。
「ねぇ…何で?」
力が込められ、首元にルキフェルのさらさらとした髪が当たる。
「――痛っ…」
「愛してる……」
首筋に咲かされた一片の紅い花。
そして僅かに漂うヴァニラとイランイランが混ざりあった様な、不愉快な甘ったるい香り。
しかしその香りは直ぐに、切なく噛み付く様なルキフェルの唇と舌で熱に浮かされ、部屋に響き渡る水音と漏れる甘い吐息で、あたしの五感から掻き消されてしまった。
ルキフェルはこの空間を創ったと言った。しかしあの日、イスペラディティアの街にも同じ月が浮かんでいた。それじゃあ、どれがイミテーションであって、どれがイミテーションじゃないんだろう。――それとも全部本物なんだろうか。
(みんなに会いたいな……)
「……渉さん…」
「何で、僕以外の男の事を想って、その口から僕じゃない名前が紡がれるの?」
今までここに無かった温もりに身体を拘束され、切なげな声が耳元から聞こえた。
「ねぇ…何で?」
力が込められ、首元にルキフェルのさらさらとした髪が当たる。
「――痛っ…」
「愛してる……」
首筋に咲かされた一片の紅い花。
そして僅かに漂うヴァニラとイランイランが混ざりあった様な、不愉快な甘ったるい香り。
しかしその香りは直ぐに、切なく噛み付く様なルキフェルの唇と舌で熱に浮かされ、部屋に響き渡る水音と漏れる甘い吐息で、あたしの五感から掻き消されてしまった。