追憶のエデン
太陽が名残惜しげに沈む頃、コツン…コツン…と赤色のアンクルストラップの靴音を廊下に響かせ、1人向かう先は、あのローズガーデン。
部屋や書庫で引き篭っていても今日は何だか息苦しく、外の空気を思いっきり肺に入れたくなり、こうして外へと向かう。
いつもと違う時間の流れ方。高い位置にある窓からは寂しげな夕日が差込み、エントランスをオレンジに染め上げていた。
ふわふわと黒のワンピースの裾を揺らしながら外へと足を踏み出せば、さらりと誘うかの様な風が、長い髪を攫う。そしてさっきまで感じていた息苦しさから、少し呼吸が出来る様になった気がした。
少し軽くなった足取りに嬉しくなって、庭園に続くピンクや黄色、白といった薔薇のゲートを潜れば、あの日に見た景色とは違うローズガーデンがそこには広がっていた。
(やっぱりここの薔薇は凄く綺麗……
でも…夕日の中で見る薔薇は、前見た時と全然印象が違うなぁ……。)
そう思いながらもゆっくりと薔薇に手を伸ばせば、無意識にあの日の光景が思い出されてしまった。
慌ててその思考を掻き消す様に首を振り、溜息をつけば、コツリと敷かれている石畳を踏む音が小さく聞こえた。
「あらぁ?貴女は確か、先程の――。」
――えっ!?
声を掛けられ振り向けば、あの時ルキフェルを呼びに来た女の人が、優雅な微笑みを湛えながら立っていた。
驚き、立ち呆けていると「ご一緒してもよろしいかしら?」と、一声掛け隣に並べば、何処かで知っている様な、甘い香りが彼女からふわりと漂い、さっきまで軽くなっていた気持ちが、今度はピリリと張り詰めさせる。
「そんなに警戒しないで下さいませ?
何も貴方をとって食べようだなんて事、しませんことよ?」
クスクスと口元を軽く手で隠し上品に笑う声に、ゆっくりと彼女の方へと顔を向け瞳を合せる。
部屋や書庫で引き篭っていても今日は何だか息苦しく、外の空気を思いっきり肺に入れたくなり、こうして外へと向かう。
いつもと違う時間の流れ方。高い位置にある窓からは寂しげな夕日が差込み、エントランスをオレンジに染め上げていた。
ふわふわと黒のワンピースの裾を揺らしながら外へと足を踏み出せば、さらりと誘うかの様な風が、長い髪を攫う。そしてさっきまで感じていた息苦しさから、少し呼吸が出来る様になった気がした。
少し軽くなった足取りに嬉しくなって、庭園に続くピンクや黄色、白といった薔薇のゲートを潜れば、あの日に見た景色とは違うローズガーデンがそこには広がっていた。
(やっぱりここの薔薇は凄く綺麗……
でも…夕日の中で見る薔薇は、前見た時と全然印象が違うなぁ……。)
そう思いながらもゆっくりと薔薇に手を伸ばせば、無意識にあの日の光景が思い出されてしまった。
慌ててその思考を掻き消す様に首を振り、溜息をつけば、コツリと敷かれている石畳を踏む音が小さく聞こえた。
「あらぁ?貴女は確か、先程の――。」
――えっ!?
声を掛けられ振り向けば、あの時ルキフェルを呼びに来た女の人が、優雅な微笑みを湛えながら立っていた。
驚き、立ち呆けていると「ご一緒してもよろしいかしら?」と、一声掛け隣に並べば、何処かで知っている様な、甘い香りが彼女からふわりと漂い、さっきまで軽くなっていた気持ちが、今度はピリリと張り詰めさせる。
「そんなに警戒しないで下さいませ?
何も貴方をとって食べようだなんて事、しませんことよ?」
クスクスと口元を軽く手で隠し上品に笑う声に、ゆっくりと彼女の方へと顔を向け瞳を合せる。