追憶のエデン
でも何故出会ったばかりのあたしにそんな親切にしてくれるのか疑問に思い、彼女に尋ねれば


「悪魔だって、人間と同じ様に心はありますのよ?
いつ危険な目に合うか分からないこの世界にいる未羽さんを放って置くなんて、わたくしには出来ませんわ。」


 綺麗に引かれた真紅のルージュがふわりと弧を描けば、慈悲深く力強い蒼い瞳が細められる。
そしてそんな彼女に、ぽろぽろと自然に涙が溢れた。


「――ッ!…ありがとうございます!!」



ここの世界に来てからずっと知らず知らずのうちに神経を張り詰めさせていた。戻れるかも分からない異世界で、絶望が希望をじわじわと摘み取って行く不安と恐怖。しかしその感覚に麻痺してしまったかのように、最近は時間をただ流していた。そんな中で、久しぶりに本当の心を解放させてくれた彼女に、心から感謝した。
そんな涙の止めることが出来ないあたしをアリシアさんは優しく抱締め、落ち着くまで「よしよし…。」と子守唄の様に背中をトントンしながら、側にいてくれたのだった。


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