追憶のエデン
アリシアさん達の滞在期間は10日程らしく、今回はバカンスも兼ねた、この国の最新技術を取り入れた開発の商談だと、あの日の夜、夕食後に偶然出くわした彼女から聞いた。


それ故に彼女の父アルベルト卿と商談中のルキフェルとはすれ違いの時間を送っていた。


そしてその間のあたしといえば、アリシアさんと一緒に時々お茶をしたりして、久しぶりのガールズトークの時間を楽しんでいた。


しかし例えどんなに就寝時間が違えども、朝、目が覚めれば、あたしを抱きしめて眠るルキフェルの寝顔があり、この時間だけはすれ違う事はなかった。そんな日が4日程続いていた。
 


(今日は何しようかなぁ?ここに来てから何もすることがないんだよね。)


「ここに関する事を調べたくても、小説みたいな本以外は、何語で書いてあるかすらわかんないから読めないし。はぁ……。」


そう溜息と愚痴を零しぶらぶらと城内を歩いていると、窓の外から見えた庭園に見知った二人組が楽しそうに談笑している姿が目に入った。
しかし女の腕が組んでいた男の腕からするりと抜けると、そのまま首に両腕を回せば、男は女の括れた腰に腕を回す。そして暫く見詰めっていた男女の距離がゆっくり近づき始めるのが見えた。


――ズキン



そこまで見て、それ以上は彼らを見るのは止めた。


見なくてもあれから何が起きるかなんてわからない程、子供じゃない。


ただ、呼吸がまた上手く出来なくて、体中の酸素がなくなったみたいで早くこの場所から離れたくて仕方がなかった。
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