追憶のエデン
どれくらいそうしていたのだろうか。
いつの間にか寝てしまったらしく辺りは薄っすらとした夕闇が広がっていた。肌寒さを感じ両肩を抱きしめれば、身体は冷たく、すっかり冷え切ってしまっていた。
それでもこの部屋を出る気にはなれず、窓の外で金色に煌めく一つの星を暫く眺めていた。
しかし静寂を切り裂く様に、ドアを叩く音が鳴り響いた。その音に振り返ればいつもの様に無表情なオロバスさんが立っていた。
「こちらにおいででしたか、未羽様。ご夕食のご用意が整いました。」
抑揚のない落ち着いた声音は少し低めで、初めて彼の声を聞いた。
「どうしてここが?それに、あたしの名前――。」
「もちろん存じております、未羽様。
こちらに未羽様がいらっしゃると教えて下さったのは、ルキフェル様です。
ルキフェル様は今夜も一緒にご夕食をお取りにはなれませんので、こうして僭越ながら、私が未羽様をお迎えにあがらせて頂きました。」
漆黒の髪から除く双黒の瞳は、ぴくりとも動かさず、淡々と言葉を述べ、真っ黒な執事服姿と相まって冷たい印象を与えるが、ドアから先へと踏み込まずじっと待ってくれているのは、彼なりの気遣いなんだろう。
「ありがとうございます。」とだけ言うと、部屋から出て彼の後に着いて、豪華なシャンデリアが煌々と照らす廊下を、言葉を交わす事もせず、淡々と静かに二人で歩いていく。
窓の外、夕闇が薄っすらと広がっていた筈の景色は、真っ暗な闇を広げ金色に煌めく星が一人で寂しげに輝いていた。
いつの間にか寝てしまったらしく辺りは薄っすらとした夕闇が広がっていた。肌寒さを感じ両肩を抱きしめれば、身体は冷たく、すっかり冷え切ってしまっていた。
それでもこの部屋を出る気にはなれず、窓の外で金色に煌めく一つの星を暫く眺めていた。
しかし静寂を切り裂く様に、ドアを叩く音が鳴り響いた。その音に振り返ればいつもの様に無表情なオロバスさんが立っていた。
「こちらにおいででしたか、未羽様。ご夕食のご用意が整いました。」
抑揚のない落ち着いた声音は少し低めで、初めて彼の声を聞いた。
「どうしてここが?それに、あたしの名前――。」
「もちろん存じております、未羽様。
こちらに未羽様がいらっしゃると教えて下さったのは、ルキフェル様です。
ルキフェル様は今夜も一緒にご夕食をお取りにはなれませんので、こうして僭越ながら、私が未羽様をお迎えにあがらせて頂きました。」
漆黒の髪から除く双黒の瞳は、ぴくりとも動かさず、淡々と言葉を述べ、真っ黒な執事服姿と相まって冷たい印象を与えるが、ドアから先へと踏み込まずじっと待ってくれているのは、彼なりの気遣いなんだろう。
「ありがとうございます。」とだけ言うと、部屋から出て彼の後に着いて、豪華なシャンデリアが煌々と照らす廊下を、言葉を交わす事もせず、淡々と静かに二人で歩いていく。
窓の外、夕闇が薄っすらと広がっていた筈の景色は、真っ暗な闇を広げ金色に煌めく星が一人で寂しげに輝いていた。