追憶のエデン
「っはぁーーーッ!!つっかれたぁーーー!!でもぉ…すっげぇ気持ちいいーーーっ!!!」



散々空を駆け回り、あたし達はいつしか見た事のある湖の畔に降り立った。
そして座るあたしの横でゴロンと横になり、興奮冷めやらぬ状態で彼は叫んでいた。あたしはというと叫びまではしないけど、興奮さめやらぬ状態というのは同じだった。


「ねぇ、君もそう思うでしょ?
…っあー、でもごめんね…結界の外にさ、本当は連れてってあげたかったんだけど……」


「ありがとうございます。
でも、あたしにとってはこの場所だって十分外の世界だし、すっごく嬉しいです。
だってこんなに空も、湖も、木々も、小さなこのお花達も、キラキラ輝いてすっごく綺麗……」


そう言って思いっきり空気を吸い込み、目前に広がる景色を眺めていた。


「グレン。」


「え?」


「俺の名前、グレンって言うんだ。君は?」


「未羽。」


「未羽か…。
ねぇ、未羽にどんな辛い事があって泣いてたのかは、分かんないけどさ。
また泣きたくなったら、俺がまたこうして行き場所を決めて連れ出してあげるね。
うんん、いつでもまたぁ、こうして連れ出してあげる。
……ほら、約束。なっ?」


差し出された小指にそっと小指を絡める。
『ゆびきりげんまん』をして二人で笑い合えば、優しく暖かな風が二人の間を通り抜けて行った。


その後は何をしてたのかと言うと、本当にくだらない話を取り留めもなくした。「何の食べ物が好きー?」とか「俺、こう見えて低血圧なのー」とか、本当にどうでも良くて、普通の会話。なんだか仲が良い男友達と話してる様な、そんな気分だった。だって気付いたらグレンと話す時、タメ口になっちゃってたもん。


――本当にありがとう、グレン。
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