追憶のエデン
湖畔をオレンジ色へと染める夕日。
それはこの一時の終わりを告げる様にゆらゆらと湖に映る。
どちらからというわけでもないけど、あたし達はゆっくりと歩き出した。その向かう先は、口に出さなくても分かる。だからさっきまで忘れていた事がまた顔を出し掛けて気分が沈み始めた。



「ごめんね…。
でもさ、約束が俺らにはあるから。未羽はもう俺の友達だから、そこんとこ絶対忘れないでよねっ!」


前を歩いていたグレンが振り返り、切なさを含ませた顔を一変させて、純粋な笑顔であたしを友達だと言って人差し指をビシッとあたしの顔の前で指を指した。艶やかなグレンの白い髪がオレンジに輝いてすごく綺麗だと思った。


「忘れないよ。絶対ね。なんなら、もう一回ゆびきりでもしとく?」


「いいよぉ。ほら小指出してぇ。それと、もし約束破ったら、ちゃぁんと針千本飲んでねぇ。」


「それってグレンが破った場合もだからね?」


「げぇ~。絶対痛いじゃん!俺死んじゃうじゃん!」


「ちょっと!最初から破る気じゃない!」


「もぉ~冗談に決まってんじゃん。
破るわけないでしょっ。はいっ、指出してね~」



『ゆびきりげんまん 嘘吐いたら 針千本飲ーます 指切った』



この約束があるなら、あたしはまだ一人じゃないって思えた。
これからまたあの鳥籠に戻るのだとしても――。
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