追憶のエデン
「――グレン!!」


アリシアさんに横から蹴り飛ばされ、グレンは勢いよく床に転がされ、痛みに耐える様に小さく蹲っていた。


「あぁ、グレンならあの程度、大したことないですわ。
半分、わたくしのお父様の血が受け継がれた、あれでもインキュバスですもの。」


「な、何を…言っ、て……。グレンとは、血の繋がった…姉弟、なんで、す、よね……?」


「半分だけで、貴女には関係のない事ですわ。
それに使えないインキュバスは用済みですの。」



「――ッ!!」


距離を詰められ、ピタリと首筋に当てられた鋭く光る銀のナイフの冷たさに、絶望感と死への現実味が帯びていく。



「貴女さえ居なくなれば、きっとまた元通りになれる。
今度こそ、わたくしの事も少しは見て貰える……。」


「こんな事をしても、きっと何も変わらない!」


「お黙りなさい!!貴女に何が分かるの!?イヴの生まれ変わりってだけじゃない!
生まれ変わっても尚、あの方に無条件に愛されて、その愛を貴女は拒んで……



わたくしだって少しでも彼に愛されたかった!


わたくしの方が何倍も彼を愛してますわ!


――ずっと…ずっと……彼だけを……愛してるの……。」


アリシアさんの瞳から涙が溢れていた。
それがとても、綺麗だと思ってしまい、彼女を見つめていた。



「さぁ、おしゃべりはもうお終いですわ。
さよなら、未羽さん――いいえ、イヴ。



死ねぇええぇぇぇぇッ!!」


頭上高く振り上げられた銀のナイフ。
そして一瞬のうちに頭に過ったのは




「――ッ、助けて!ルキフェル!!!」
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