追憶のエデン

「煩い。
何を駄々をこねて引きこもり、泣き喚いているかと思えば、クダラナイ。」


急に聞こえた、突き放す様な冷めた声。
二人の死をクダラナイと言われた気がし苛立ちが込み上げ、ガバリと上半身を起こせせば、ベッドの脇に立ち、無表情な顔であたしを見下ろすオロバスさんがいた。



「クダラナイだなんて酷い！！」


「クダラナイという言葉では伝わりませんか？
では、こう貴女には尋ねましょう。

貴女は何故、泣いているのです？」


「だってあの二人が死んじゃったんだよ？しかも絶対あの二人は死ぬ事なんて望んでなかった。相手の為に死ねて嬉しいだなんて嘘に決まってるじゃない！」


「ええ。恐らく、彼らは“死”など、これっぽっちも望んでいなかったでしょうね。

それで…あなたが何故、泣く必要があるのです？」


「二人が死んじゃって、悲しいの！もう会えない！話す事も出来ない！それに何よりッ…」


「貴女の口から彼らを同情するような言葉を発したら、私は容赦なく貴女を引っ叩きますよ？


まったく…貴女がここまで愚かで頭の悪い人間だとは想定外でした。
では、私が馬鹿な貴女にも分かるように言って差し上げましょう。



あの姉弟を最終的に追い詰め、殺したのは…‥‥未羽。貴方、ですよ。」



淡々と告げられた言葉。
理解しようにも、頭は追いつかない。


そんなあたしに容赦ない言葉は、まだまだ突き刺してくる。


「貴女がこの世界へ来なければ、あの二人は確かにまだ今頃生きていたでしょう。
しかしそんな仮定などなくとも、貴女の選択一つでこのような運命を招く事もなかったのも事実。
何故なら…貴女は信じるべきだったものを、自ら放棄し、簡単な忠告すらも無碍にし、妄信的自己判断で勝手な行動を起こした。
それによって、この様な結末の未来を創り出した。
全て貴女のせいではありませんか？
それなのに創り出した当事者の貴女は、一人、悲劇のヒロイン気取りですか？……ハッ！」


「そんな…悲劇の、ヒロイン気取りなんか……。」