追憶のエデン
カツーン…カツーン…と少し高めにゆっくりと響き渡るヒールの音と、
コツン、コツンと小さくスタッカート気味に響き渡る窓を打ち付ける雨の音。
異なる音程とリズムを刻み、静寂を保つ廊下で共鳴する。
全く相容れる事すら考えられなかった、個々の音達が、見えない譜面の上で、踊り、徐々に繋がり、一つのメロディーを奏で、広がっていくような感覚。
長い様な…うんん。短い様な道のりは、目的の場所へ近付くに連れ、何とも云えない気分を高めていく。
緊張感?それとも高揚感?それとも……
――恐怖や不安?
どれも違うようで、どれもしっくりくる。
本当に良く分からない気持ち。
(どうやって言おう…
『助けてくれてありがとう。――』
それから?
『約束を破ってごめんなさい。』
……何か、違う気がする…。
『傷付けてごめんなさい。』
……これは何だか、無責任な感じ…)
「――はぁ…見つからない……。」
言葉で表せないモノは、どうやって表せば、感じてるこの想いを全部伝える事が出来るんだろう。
時に、言葉とはこんなにも無機質なものなのかと初めて感じた。
しかしうだうだと頭を悩ませていても、そんな時間はあっという間に終わりを告げる。
3m…2m…1m……80、70、60…50、――cm。
目の前のドアの向こうに耳を澄ませば、僅かだが聞こえる物音。
確信は鼓動を強く脈打たせ、胸の前で握った右手は少し震えていた。
言おうと思っているセリフも『ありがとう』以外の気持ちを、本当はどれも言葉に表せなかった。でもそれでも伝えたい気持ちだけでここまで来たのだ。
呼吸を一つ吐き、心を決めてコンコンとノックをする。
すると「誰?」というルキフェルの声が返って来て、また一つ、心臓が飛び跳ねた。
「未羽です。えっと…その、ルキフェルに伝えたい事があって。今、少しだけなんだけど、いいかな?」
そうルキフェルに伝えると数秒置いて、目の前のドアが小さな音を立てて開けられた。
そして目線を上へと上げれば、ルキフェルの闇を纏ったままのサファイアブルーの瞳があたしを見下ろしていた。
「ルキフェルッ!…あ、ッ――あのねッ!!」
コツン、コツンと小さくスタッカート気味に響き渡る窓を打ち付ける雨の音。
異なる音程とリズムを刻み、静寂を保つ廊下で共鳴する。
全く相容れる事すら考えられなかった、個々の音達が、見えない譜面の上で、踊り、徐々に繋がり、一つのメロディーを奏で、広がっていくような感覚。
長い様な…うんん。短い様な道のりは、目的の場所へ近付くに連れ、何とも云えない気分を高めていく。
緊張感?それとも高揚感?それとも……
――恐怖や不安?
どれも違うようで、どれもしっくりくる。
本当に良く分からない気持ち。
(どうやって言おう…
『助けてくれてありがとう。――』
それから?
『約束を破ってごめんなさい。』
……何か、違う気がする…。
『傷付けてごめんなさい。』
……これは何だか、無責任な感じ…)
「――はぁ…見つからない……。」
言葉で表せないモノは、どうやって表せば、感じてるこの想いを全部伝える事が出来るんだろう。
時に、言葉とはこんなにも無機質なものなのかと初めて感じた。
しかしうだうだと頭を悩ませていても、そんな時間はあっという間に終わりを告げる。
3m…2m…1m……80、70、60…50、――cm。
目の前のドアの向こうに耳を澄ませば、僅かだが聞こえる物音。
確信は鼓動を強く脈打たせ、胸の前で握った右手は少し震えていた。
言おうと思っているセリフも『ありがとう』以外の気持ちを、本当はどれも言葉に表せなかった。でもそれでも伝えたい気持ちだけでここまで来たのだ。
呼吸を一つ吐き、心を決めてコンコンとノックをする。
すると「誰?」というルキフェルの声が返って来て、また一つ、心臓が飛び跳ねた。
「未羽です。えっと…その、ルキフェルに伝えたい事があって。今、少しだけなんだけど、いいかな?」
そうルキフェルに伝えると数秒置いて、目の前のドアが小さな音を立てて開けられた。
そして目線を上へと上げれば、ルキフェルの闇を纏ったままのサファイアブルーの瞳があたしを見下ろしていた。
「ルキフェルッ!…あ、ッ――あのねッ!!」