追憶のエデン
何でかな?


こんなにも、今、ルキフェルの事で埋め尽くされて、胸がキュウっと締め上げられていく。



「……ごめんなさい…ッ…」



何でなのかな?



――――――。





*



――……で……ェ…、い……?
――……?…
――ね…、イ………と………、……?
――…!………ぇ…じて………が愛……………?
――…、……だ……う?
――~~………。
――…して…。





*





懐かく切ない水の香りが、上品な薔薇の香りと混ざり合い、空気に溶け込み、流れ辿り着いた先。
いつの間にか眠ってしまっていたようで、あんなに頻りに音を立て降っていた雨の気配は、すっかり鳴りを潜めていた。



(何か夢を見てた気が――。あれ?いつの間にベッドで寝てたんだろ?)


てっきりあのままソファーで寝落ちてしまっていたと思っていたのに、あたしはいつものベッドにきちんとブランケットを掛けられて寝ていた。でも隣にはいると思っていた人物は居らず、ただ広過ぎるこのベッドにも、この部屋にも、あたし一人しか居なかった。
その現実にまた胸がチクリと痛む。空いてしまっている隣のシーツにそっと指を走らせれば、またチクリと胸が痛みつつも、その場所を静かに見つめていた。


しかしその時、視界の端で何かが動き、そちらを見てみればカーテンがふわふわと揺れており、バルコニーへと続く大きな窓が開けられている事に気付いた。


雨が降っていた事もあり、窓は全て閉められていた筈だった。


そっとベッドから抜け出し、その窓へと静かに近寄って行き、そっと外を見る。
するとそこには何も冷たく蒼い瞳で、大きく掛けた月を見上げるルキフェルが立っており、そして次の瞬間その表情は切なげで、苦しげに顔を歪ませていった。
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