追憶のエデン
「…クッ……傷つけたくないのに…ッ…また出逢えて、今度こそって…思った、のに…ッ!…こんなに!…こんなに!!……愛してるのに…――。」



静かな空間に響いた悲痛な声。
ドンッという衝撃と共に腕の中で包んだ温もりは、こんなにも優しくて悲しくて苦しいものだったなんて知らなかった。



「離せよ。」



冷たい声と共に、あたしの腕を振り払おうとする力が込められる。しかしそんな力に負けないようにと力いっぱい腕の拘束を強め、ルキフェルを抱締める。


「離っ「ごめんなさい!!」


「――ッ!!」


ぴくりとルキフェルが動いたのが分かった。しかし纏う空気はまだ鋭利なもので、身体が竦み、震えそうになるのを必死で堪える。



「何に対しての謝罪?」


「本当は――あの夜、ルキフェルに裏切られたと思ったのッッ!」


「何を馬鹿な…「そのままあたしの話を聞いて!」



深く一呼吸し、崩れそうになる気持ちをどうにか奮い立たせ、落ち着いてルキフェルに伝える。



「始まりはアリシアさんがこのお城へとやってきて確か4日目位の時、適当に窓からお城の外を眺めながら歩いてたら、ルキフェルとアリシアさんが…仲良くキス、しようとしてるとこを見ちゃったの。
そしてその次は、アリシアさんに『愛してる』って言って、その後に聞こえてきたのはベッドの軋む音と、二人の愛し合う声だった。

その時ね、ルキフェルが本当に愛してるのはアリシアさんなんだと思った。あたしには何か裏があって手元に置いてるだけなんだって…。
…苦しくて…痛くて…ルキフェルを…遠くに感じて、寂、しくて……何で、ッあたし以外に、あぃ…愛してるなんて、言うのッ、って。そう、思ったら目の前が、真っ暗になるくらい、嫌で!
アリシアさんが憎くて!裏切ったルキフェルも憎かったッ!
そして――息が出来ない程…苦しくなった…。
だから…逃げたの……――。」
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