追憶のエデン
「ルキフェル様。」


「何?アスモデウス。」


「この度はボクの愚民が大変ご迷惑をお掛けしました。
そして彼らへの制裁は然るべきもの。しかし父親への処罰が余りにも優しすぎるとボクは思うんです。
だってイブちゃんはァ、すっごく怖かったんでしょ?
愚かな子の不始末は、全て親の責任……。
だからァ、彼にはァ……数多の拷問の末、最後は慈悲として聖女ユングフェルに抱かれゆーっくりイかしてあげたいなぁ、なんて。くふっ
その役、ボクに遣らせては頂けませんか?」


「……うん、いいよ。アルバート卿の処罰はアスモデウス、君に一任する。
それと君にはバトラー家の不動産と事業会社を至急リストアップして欲しい。あと他の諸侯達は……」



まるで身体と心が鉛にでもなったかのように、ずぶずぶと見えない暗闇に引きずられ酸素を奪われていくような感覚だった。
無理矢理この世界へと連れて来られたという事実だけに目を向けていたあたしは、ルキフェルがこの世界を統べる王である事を知り、初めて自分がどの立ち位置にいるのか、心が悲鳴を上げて初めて漸く思い知らされた。そして自分可愛さからの軽率過ぎた行動は、知らなかったで済まされない結果へと結び付け、多くの人の全てを奪っていた。



――ギリッ



「未羽。」


あたしにしか聞こえない程度の小さな声でルキフェルに咎める様に名前を呼ばれ、意識がこちらへと引き戻されたと同時に走る痛みと口の中に広がる錆びた味。


過去は変えられない。なら刻み付けるしかない。




「ところでルキフェル様?
どうして本日は未来の花嫁様を同席で?」


会議も終盤に差し掛かった頃、いきなり狐の鏡から鋭い視線と共に硬い声が投げかけられる?



「その問いの真意は?」


「ただの好奇心、ですよ。」


「いつから頭が悪くなったの、マモン?
ふ~ん…まぁ、いいや。本当は説明なんてしなくても分かってるとは思うけど、
“牽制”かな?
君達には勿論の事、彼女に対しても、ね。
精々また馬鹿な真似をさせない様に、そしてしない様に、皆気を付けてね?
分かった?」
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