追憶のエデン
*
日も落ち、夜が深く深くなっていく頃、あたしは一人で自室にいた。
ドキドキとする心臓と胸を張り詰めさせる緊張感の中、今かと待ちわびそわそわしそうになる気持ちを必死で誤魔化す様に本を読むが、頭に何も入って来てはおらず、綺麗に並んだ文字の羅列を魅入るだけだった。
「……まだかな?」
顔を上げドアの方をちらりと見れば自然に零れたその素直な声は、何処か切なさが滲んでいた。
(って、これじゃあルキフェルに早く来て欲しいって思ってるみたいじゃないの!!)
そう考えると急に恥ずかしくなってしまい、顔に熱が集まっていく。
それに気付くと余計に体温は高まり、両手で頬を押さえ一人であわあわとしてしまった。
しかしそんな時ふわりと優しい体温と見知った香りに包まれ、耳元で「待たせてごめんね。」とルキフェルの優しげな声が聞こえれば、あんなにも忙しかった心情も一瞬で心が掴まれた様な感覚になった。
(やだ…今、きっとさっきよりも顔、赤い。)
ルキフェルにそんな複雑な乙女の気持ちを気付かれないように「別に待ってなんかいない」なんて可愛くない言葉を向けてしまった。
でもルキフェルはくすりと笑って残念と言うだけでそれ以上は聞いて来なかったのは、すごくバレバレなあたしの嘘吐きな言葉にきっとルキフェルは気付いているのだろう。
「未羽、今夜は君に見せたいものがあるんだ。だから僕の首に腕を回して、ぎゅってしてて?」
そう言うやいなや、ソファーの背もたれの後ろからルキフェルの長い腕が伸ばされ、腰と膝の裏を通れば、身体がふわりと浮いた。
「ほーらっ。ぎゅぅは?」
煩くなった心臓が悔しくて、ゆっくり首に回した腕に力を込める。
すると「いい子。」とルキフェルの落ち着いた、でも嬉々とした声色が聞こえれば、バサッと大きな黒い翼が広がるのがルキフェルの肩越しから見えた。
日も落ち、夜が深く深くなっていく頃、あたしは一人で自室にいた。
ドキドキとする心臓と胸を張り詰めさせる緊張感の中、今かと待ちわびそわそわしそうになる気持ちを必死で誤魔化す様に本を読むが、頭に何も入って来てはおらず、綺麗に並んだ文字の羅列を魅入るだけだった。
「……まだかな?」
顔を上げドアの方をちらりと見れば自然に零れたその素直な声は、何処か切なさが滲んでいた。
(って、これじゃあルキフェルに早く来て欲しいって思ってるみたいじゃないの!!)
そう考えると急に恥ずかしくなってしまい、顔に熱が集まっていく。
それに気付くと余計に体温は高まり、両手で頬を押さえ一人であわあわとしてしまった。
しかしそんな時ふわりと優しい体温と見知った香りに包まれ、耳元で「待たせてごめんね。」とルキフェルの優しげな声が聞こえれば、あんなにも忙しかった心情も一瞬で心が掴まれた様な感覚になった。
(やだ…今、きっとさっきよりも顔、赤い。)
ルキフェルにそんな複雑な乙女の気持ちを気付かれないように「別に待ってなんかいない」なんて可愛くない言葉を向けてしまった。
でもルキフェルはくすりと笑って残念と言うだけでそれ以上は聞いて来なかったのは、すごくバレバレなあたしの嘘吐きな言葉にきっとルキフェルは気付いているのだろう。
「未羽、今夜は君に見せたいものがあるんだ。だから僕の首に腕を回して、ぎゅってしてて?」
そう言うやいなや、ソファーの背もたれの後ろからルキフェルの長い腕が伸ばされ、腰と膝の裏を通れば、身体がふわりと浮いた。
「ほーらっ。ぎゅぅは?」
煩くなった心臓が悔しくて、ゆっくり首に回した腕に力を込める。
すると「いい子。」とルキフェルの落ち着いた、でも嬉々とした声色が聞こえれば、バサッと大きな黒い翼が広がるのがルキフェルの肩越しから見えた。