追憶のエデン
その時――
「――えっ?」
「未羽!!」
ドーンと衝撃音が鳴り響き、咄嗟に伸ばされたルキフェルに抱きすくめられ、ルキフェルは透明な円を囲う様に放った。するとゴゴゴゴと地を這う様な重い音がだんだん大きくなりそれと共に、ミシミシと音が聞こえる。
いきなり抱締められ、目の前に広がるのはルキフェルの黒い服一色だったが、聞こえてくる音できっと何か起こったのは明白で、腰に回された腕はそのままに、首だけで後ろを振り返る。
パリーンと音がし、飛び散った窓ガラスの破片が飛んでくるのが視界の端に映り、花瓶は倒れて割れたのか水が零れ、無残にも活けられた色とりどりの花々が床に放り出され、家具は倒れたり大きく移動したりしていて、激しく地が揺さぶられた爪痕を色濃く残していく。
どれくらいの時間だったか分からないけど、暫く暴れまわっていた地の揺れは何事もなかったかのように静寂へと返ると、ルキフェルは円を解除し、あたしの顔を覗き込んできた。
「大丈夫?」
「うん。ルキフェルの方こそ、大丈夫?」
「僕も大丈夫だよ。」
「良かった。ルキフェル、守ってくれてありがとう。」
ルキフェルの腕が心地よい強さで強められた。
「ルキフェル様ッ!!ご無事ですか!?」
いきなり放たれたドアに視線を向ければ、息をハァハァと上げ、血相を変えたオロバスさんが大きな音を立て入ってきた。
「オロバス、僕も未羽も無事だ。
それよりも報告を。」
はい、と返事をし、乱れた居住まいを正すといつもの無表情に戻り、淡々と報告をし始めた。
「先程の揺れはシールド外部に隣接する森が攻撃された模様です。」