追憶のエデン
「そして先程の攻撃は光属性であり、僅かに残された神力の痕跡から犯人は神界の者だと推測されております。また現在も森を焼き払いながら威力を弱める事なく街へと進行しており、鎮圧の為に魔道師を向かわせましたが、苦戦しているとの事。
ルキフェル様、このままではイスペラディティアの街が……。」


「わかった。僕も行くよ。
ハァ…役立たずの魔道師達め。一度査定して、力のない奴は全員殺しちゃおっかな。」


「ルキフェル様。」


「はいはい。それじゃあ、ちょっと僕、やることが出来ちゃったみたいだから、僕らの部屋でいい子にして僕の帰りを待ってて。一応念のため、ドアの外には兵士に守らせるし、未羽の側にはいつもの侍女に守らせるから。言ってなかったけど、彼女も結構強い悪魔だから安心してね?
――オロバス、行くよ。」


「かしこまりました。」


行ってきます、と言うと軽くキスをしてルキフェルとオロバスはこの部屋を出て行った。
そしてそれと同時にいつものメイドさんが入ってきて、いつもの笑顔なのにどこか固い空気を醸し出していたことで、事態の深刻さが伺えた。



メイドさんと一緒に自室へと戻れば、部屋の前にはいかにも屈強そうな強面の兵士が二名立っており、ありがとうございますとお礼を二人に告げると、二人は力強く頷き頼もしい笑顔を向けて部屋のドアを開けてくれた。


「イヴ様のお好きなお茶と、お菓子を用意しますね。」


そう彼女は言い、手際良く温めたポットに茶葉を入れ、こぽこぽとお湯を注げば、部屋にはたちまち紅茶のいい香りが広がっていった。そして座らされたソファーのテーブルに切り分けられたルビーの様に真っ赤に輝く大粒の苺が乗ったタルトと共に紅茶を出されると、彼女の気配りが感じられた。
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