追憶のエデン
誰かに操られるかのように進む足で部屋へと戻れば、何かに気付いたかの様にユノさんが血相を変え慌てて近付いてきた。しかしそんなユノを片手で押しやると、彼女は何かに弾かれた様に壁へと打ち付けられ、その衝撃音を聞いた兵士達がドアを蹴破る勢いで急いで入って来るが、その兵士達に向かって右手を前へと突き出し、光を纏った衝撃波を繰り出せば、壁にのめり込む程弾き飛ばされていった。


(今の何?てか何で身体が勝手に動くの?嫌だ!止まって!3人が!ユノさん!ルキフェル助けて!)


まるで操り人形の様になった身体は言葉を発する事も出来ず、どこかへ向かって歩いて行く。
階段を下り、エントランスを抜け、お城から出て、ゲートまで出ても、あたしの足は迷う事なくしっかりとした足取りで、森の外れへと歩いて行く。どれくらい歩いたのかは分からないが、目の前にシールドらしき膜が見え、閉ざられたシールドはあたしを確認したかの様にあたしが通れる位の楕円に広がる出口を創り出す。



「おいで、未羽。」



出口の外には渉さんがいつもあたしに向けてくれていた笑顔で、両手を広げて待っていた。
声も出す事が出来ないあたしは、ただ操られるまま彼の腕の中へと足を進めていく。



ドサッ――



シールドを抜け数歩歩けば、懐かしい腕のぬくもりに包まれた。



「未羽…お帰り。ずっと会いたかった。愛してるよ。」



動かない身体はそのままに、顎を指で上げられれば、懐かしい唇の感触の中に罪悪感が溢れ、ここであたしの意識は途絶えた。
ただ、愛してるという渉の言葉で、ルキフェルの顔が最後に過った気がした――。





*





ザザッ――


光溢れる―、ー神殿


―大き、くーぁたた…か、な…手


―ザザザッ――


きれぃ、な、瞳で――見つ、め、る…ぉとこ、のこ…


ゎらった…かぉ、は、いつも……優しく、て――なの、に…ぃっか、らか――泣きそうだった。


『イヴ、おまえは俺の一部なんだ。だから俺とずっと一緒にいなきゃいけないんだ。でも、そんな事実がなくても、イヴはずっと俺と一緒に…側にいたいって思ってくれてるよね?』


『うん。イヴはいい子だね。――愛してるよ。これから先もずっと、おまえだけだ。』
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