オヤスミナサイ~愛と死を見つめて~
世の中、お金持ちっているんだな。
 
なんて考えるところが、庶民だなと思う。

「梨聖ちゃん、コートはこっちだよ」
 
夢くんが私の手を引く。

「え、ここで買うの?」

「うん。そうしよ。いいのあったら」
 
ずんずんとお店の奥に進んでいく夢くん。
 
何だか、後戻りできない感じ……。
 
私の三千円の財布の中、いくら入ってたっけ……?
 
私は急に慌ててしまった。
 
アウターのコーナーに来ると、夢くんは繋いでいた手を離し、品物を見定めた。
 
ハーフ丈とトレンチコート、アンゴラのロングピーコート、ステンカラーのコート……。
 
確かに、ものはしっかりしていそうだった。
 
どれもモノトーンで、落ち着いた雰囲気を見せる。
 
大人な夢くんには、どれもこれも似合いそうだ。
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