オヤスミナサイ~愛と死を見つめて~
「梨聖ちゃん、どれがいい?」

「ん~、ハーフ丈がいいな」

「じゃあこれは? ショールカラーのウールピーコート」
 
ハンガーに掛けてあるコートを取って、私に渡してくれる。

「うん、可愛い」

「着てみて」

「うん」
 
私はコートを羽織った。
 
軽くて、暖かい。気に入ってしまった。

「どう?」

「良い感じ」

「じゃあ、俺も同じの買おうかな。ペアルックにしようよ」
 
嬉しい申し出だった、けれど……。
 
庶民の私にとっては、目が飛び出るほどの値段のコートだった。
 
私が去年着ていたコートが、5着は買えるくらいだ。

「あの、私、お金……」
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