オヤスミナサイ~愛と死を見つめて~
正直に申し出ると、夢くんはにっこりと笑った。

「買ってあげるよ」

「ええっ、いい、いいよ。そんな、申し訳ない」
 
そんなつもりで来たのではないのだ。

「ちょっと早い、クリスマスプレゼントだと思って」

「クリスマスには、もっと違うものをいただくわ」
 
すると、一瞬、夢くんの顔が曇ったような気がした。
 
けれど、それは刹那にいつものにこにこ夢くんに変わった。

「いいの。俺がそうしたいんだから」
 
夢くんはサイズ違いのコートをふたつ持って、レジへと歩んで行った。
 
夢くんは時たま、翳りのある表情を見せる。
 
何か、隠してる――?
 
私には教えられない、重大な、何か。
 
レジでお金を払う、夢くんの背中を見つめながら、私は何故か不安感を抱いていた。

「ありがとうございました」と、店員さんに深々とあたまを下げられ、私たちはお店を後にした。
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