オヤスミナサイ~愛と死を見つめて~
「このコート着て、一緒に歩けるかなぁ」
 
地上に出たところで、夢くんは言った。
 
私は、その言葉の真意など、汲み取れずにいた。

「ペアルックだなんて、ちょっと恥ずかしいね」

「浮かれてるよね」

「そうね。でも、嬉しい。ありがとう」

「いえいえ、どういたしまして」
 
片手にコートの入った買い物袋を持ち、もう片方の手で私の手をぎゅっと握ってきた。
 
心地いい手のぬくもりに、私は酔いしれてしまう。
 
私ははぐれないように。
 
夢くんのこころからも、はぐれないように。
 
ぎゅっと繋いだ手に力を入れた。
 
ぎゅっ、と夢くんも力を入れ返してくれる。
 
こころに届くビート。
 
ああ、私は本当に幸せ者だ。
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