オヤスミナサイ~愛と死を見つめて~
「そう。ありがと、さやか。ちゃんと話てくれて」

「ほんっとうにごめん、梨聖」
 
深々とあたまを下げるさやか。

「いいよ。私、今、幸せだから」
 
私は無理矢理笑顔をつくる。

「ならよかった」
 
顔を上げたさやかは、安堵の表情を浮かべていた。

「私と別れて、これからは堂々とつきあえるわね。よかったね」

「うん。……じゃあ、行くね」
 
さやかと想太は、私たちをすり抜けて行ってしまった。
 
去り際に、想太は私の肩をぽん、と叩いて、

「ごめんな」

と、ぽつりと呟いた。
 
ごめんじゃないよ……。
 
私、ずっと騙されてた……。
 
するどい刃で、胸を突かれた衝撃が走った。
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