オヤスミナサイ~愛と死を見つめて~
気がつくと、頬を伝う、熱いものがあった。

「梨聖ちゃん……」
 
夢くんが優しく声をかけてくれる。
 
だけど、私の涙は、とどまることを知らなかった。
 
街行くひとが、私が泣いているのを不思議そうに見て通りすぎるのにも、気づかないほどに。

「梨聖ちゃん、お店、入ろう。ネカフェがある」
 
夢くんは、私の手をとり、近くのネットカフェに連れ込んだ。
 
夢くんが、カウンターで手続きをしている間も、私ははらはらと涙していた。

「行こう。席、取れた」
 
薄暗い店内。
 
私は夢くんに促されるまま、個室ブースへと入った。
 
半透明の引き戸を開けると、ソファがひとつあって、テーブルにはテレビとパソコンが置いてあった。

「んっく。んっく……え~ん」
 
誰にも見られていないことで落ち着いたのか、涙があとからあとから溢れてきた。
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