オヤスミナサイ~愛と死を見つめて~
「……うん。だけど、知らない方が幸せだったのかも」

「そうか」
 
夢くんは、ぐしゃぐしゃになったティッシュを私から受け取り、またあたらしいティッシュをよこしてくれた。

「……きっと、想太の本命は、さやかの方だったのよね」

「どうして?」

「だって、ふたり、幸せそうだったもん」

「そう見えた?」

「見えたよ。それに、私が別れたいって言って、夢くんに会わせただけで、すんなり別れを認めてくれるなんて、頑固な想太にしては変だと思ったのよね」

「そうか」

「でも、いい。ごめん。泣くのはもうやめにする」
 
私は唇をきゅっと結んだ。

「泣いていいよ」

「ううん」

「泣いていいんだよ。友だちに裏切られるショックって、大きいから。元の恋人に、あたらしい彼女ができるっていうのも、少なからずショックなの、解るから」
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