オヤスミナサイ~愛と死を見つめて~
おとといの朝帰りといい、ゆうべの無断外泊といい。

一体私は、いつからこんな不良ムスメになってしまったんだろう。

「そんな焦んなって。大丈夫だから」

さっきから“大丈夫”をくり返している夢くん。

一体何を根拠にその自信があるのだろう――。

そして、私と夢くんは、私の実家の前に、立った。

いつも帰ってる場所なのに、なんだか今日はよその家のように入りにくい。

どうしよう。チャイムを押して入ろうか。

鍵を使って入ろうか。

チャイム押したら誰か出てくるだろう。

お母さん、お父さん――どちらでも怖いな。

お兄ちゃん、お姉ちゃんなら、呆れながらも怒らずに入れてくれるだろうけど。

「どうしたの? 大丈夫だって」

まごまごしている私に、また夢くんは根拠のない自信をぶつけてくる。

えーい。

私は観音開きの黒い扉を開け、自分で鍵をあけ、玄関に入り、大声で「ただいまー」と、半ばヤケで言った。
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