オヤスミナサイ~愛と死を見つめて~
大きな靴の足跡が、ずっと続いていた。

黒いジャケットに白いYシャツ、チノパン姿。

服のコーディネートも悪くない。

「おひとりで来たんですか?」

「うん」

私が尋ねると、彼は海に向き直り、目を細めた。

「あの子たちと来たの?」

「はい」

「いいね。賑やかで」

帆乃香たちはこの初秋の季節、水のかけ合いなんてしている。

タオルももってきてないし、レンタカーなんだぞ? 車汚れちゃうって。

まぁ、楽しいんだったら、いいけれど。

「君は、皆と遊ばないの?」

私は座ったまま、彼を見上げるように首を伸ばし、左右に振った。

冷たい水に浸かって、風邪などひきたくなかったのだった。

「そう」
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