オヤスミナサイ～愛と死を見つめて～

「いかがでしょう。このメーカー、冬の乾燥にも強いですし、お化粧崩れもしにくいんですよ。新商品なんです」
　
しまった。これは、買わされてしまう。
　
夢心地だったのに、いきなり現実に戻された。

「あ、この子、乾燥肌で、塗ったあとからパキパキってひび割れちゃうことがあるんですよね。今回、このままで過ごしてみて、乾燥しないようだったらまた買いに来ます。絶対」
　
どこにいたのか、どこから来たのか、鈴が口を出してきた。
　
どっからそんな嘘が出るのか、べらべらとまくしたてる。　

「さようですか。では、サンプルをいくつかお出ししますね」
　
嘘と知ってか知らずか、店員さんは笑みを浮かべる。

「あ、この子、アイシャドーとかチークとかしたら映えますかね。いつも化粧っ気なしなんで」

「おつけしますか？」

「はい」

鈴は一体、どうしてここまでしてくれるんだろう。