オヤスミナサイ~愛と死を見つめて~
「両親……」  
 
夢くんはメガネをくいっと上げた。

普通の両親だよ。父親は銀行員で、母親は専業主婦。だけど、大らかかな。真っ直ぐ育てられたというか、ワガママし放題だったな」

「そうなの?」
 
彼は真っ直ぐ前を向いていたけれど、ちらり、と私を見た。
 
そして、にこっと笑う。

「梨聖ちゃんと暮らしたい、だなんてワガママも叶えてくれたんだから」

「そっか……。それってすごいワガママだよね」

「ははは。言われちゃったな」

「うちの両親も、私に甘かったな。あ、ほんとの両親じゃないんだけどね。小さい頃、事故で両親が亡くなって、伯父伯母に育てられたんだけど、知ってるよね」

「実際に会ってるし」
 
私の家に、同棲の承諾を得るため、夢くんは来たことがある。
 
やけに両親は夢くんのことを気に入ってたっけ。

「本当の娘じゃないのに、大学まで行かせてもらって、ありがたいよ」
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