オヤスミナサイ~愛と死を見つめて~
「梨聖ちゃん、愛想いいもんね」

「ありがとう……今後の経験のために、バイトでも始めようかな」
 
軽々しく口にした言葉だった。
 
すると夢くんはちいさな声で呟いた。

「バイトする時間あったら、俺の傍にいて」
 
本当に、素直なひとだな、なんて私は頬を熱くしながら思った。

「うん……」
 
照れで、私はちいさく呟いた。
 
私は窓の外の景色に目をやる。
 
飲食店、カー用品店、シャッターの閉まった建物……色んなお店が前から後ろに流れていく。
 
やがてそれは、田んぼの風景に変わった。
 
細い道をくねくねと動く。

「酔わない? 梨聖ちゃん」

「うん。乗り物酔いって、ほとんどしたことがない」

「ならよかった。俺も乗り物酔いした記憶がないな」
< 227 / 350 >

この作品をシェア

pagetop