オヤスミナサイ~愛と死を見つめて~
靴の中に、砂が入ってきた。
 
帰る時には、砂を落とさないと。
 
せっかくの夢くんの車を、汚してしまう。
 
夢くんは、無言で歩いている。
 
遠くの海を眺めている。
 
客船が一艘、右から左へ流れていく。
 
あの船は、どこへ行くのだろう。
 
夢を乗せて、パラダイスにでも行きそうな感じだ。
 
そう感じるほど、私は幸せの中にいた。

「夢くんは、船に乗ったことある?」
 
私が尋ねると、彼は振り向いた。

「あるよ。だけど、苦手」
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