オヤスミナサイ~愛と死を見つめて~
「えー。奇特―」

「……走ってると風がキモチ良くてね。夏の緑も眩しいし。何とも言えない」

「あ、その気持ちは解ります。自転車乗ってても、風も景色もキレイですよね」

「うん。キレイな風景。……海は海でもシーズンオフがいいかな。静かに佇んでいられる」

信号で車は止まった。

渡海さんは、ハンドルに手とあごをのせ、横断歩道を行き交う人々を眺めている。

「渡海さんて、何か眺めるの、好きですよね。さっき海で私たちはしゃいでたとこにいたし。文化祭の実行委員やってる私を見てたり。マラソンの景色とか、海とか、空港とか。そういうの」

信号が青になり、車はまた走り出す。

「うん――。ぼーっと何かを無心で見るの、好き。心を開放してる感じかな」

「いいですね。私も心奪われる時、ありますよ。空がキレイだったりすると、つい写メとっちゃったりして」

「うんうん」
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