オヤスミナサイ~愛と死を見つめて~
涼くんが口を開くまで、私も黙っていようと思った。
 
別に、会話がなくても気まずくないし、むしろ心地よい方だった。
 
じっくりお酒とも向き合えるし。
 
結局、私はお酒があれば、何でも楽しめてしまうのだ。
 
ふたり、無言のままビールを3杯ずつ飲んだ頃だった。
 
焼き物のほっけが運ばれてきて、そこで彼は、

「日本酒、行く?」

と、私に初めて尋ねてきた。

「うん」
 
私は素直に頷いた。

「お待たせいたしました、こちらから、ぼんじり、ねぎま、なんこつでございます」
 
店員さんが、お皿に乗った串焼きを右から順に説明してくれる。
 
焼き魚に、焼き鳥、やっぱり日本酒が合う。
 
涼くんと私は、食の好みが合うのかもしれない。

「すみません、熱燗2合。おちょこ2つで」
 
引き下がった店員さんは、やがてまた熱燗を持ってやってきた。
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