オヤスミナサイ~愛と死を見つめて~
「そうか」
 
私は日本酒に口をつけ、続けた。

「年が離れてるから、ケンカにもならなかったけれど。あ、でも昔、お兄ちゃんのベッドの下の、エロ本見つけて、親に見せたの。“これ、なあに。何でおねーさんはお風呂あがりで裸なの?”って。それでお兄ちゃん、親に叱られたって。それで私はお兄ちゃんに叱られた」

「無邪気にも程があるな」

「だって、ほんとに謎だったんだもの。裸の女のひとの写真なんて」

「それから?」
 
彼は私の話の続きを聞きたいようだった。

「あとは……お姉ちゃんにも叱られたことあったな。庭でダンゴムシたくさん拾って、どこかに確保しておけないかなって思って、姉のランドセルに入れたの。丁度蓋も閉まるじゃない? そしたら、お姉ちゃんの絶叫が聞こえた」

「だろうな」

「お姉ちゃんには泣き喚きで叱られるし、ダンゴムシは捨てられるしで、私もわんわん泣いたっけ」
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