オヤスミナサイ~愛と死を見つめて~
「くくく……」
 
涼くんが、唇の端だけ上げて、笑った。
 
あら、笑うとハンサムが幼顔になる。可愛らしいと思ってしまった。

「仲良いじゃん。ちゃんとした家庭で育ったんだな」
 
ちゃんとした家庭……私はその言葉を反芻した。
 
確かにそうかもしれない。私は、幸せな人生を送ってきた。

「だけど、血の繋がらない家族だけどね」

「……」
 
涼くんは真顔になって、私を見た。お酒を飲む手が止まった。

「今の私の両親は、伯父伯母にあたるひとで、お姉ちゃんお兄ちゃんは、本当は従姉弟なんだよね」

「……実のご両親は?」

「事故で死んじゃった。私が物心つく前に」

「淋しくなかったか」

「うん。だって、両親の顔も声も覚えていないもの。気がついたら、今の伯父伯母が両親よ」
< 268 / 350 >

この作品をシェア

pagetop