オヤスミナサイ~愛と死を見つめて~
と彼は笑っていう。

笑う目元が優しい。

そして彼はフォークを手にしてパスタを食べはじめた。

私はオムライスを食べながらも、滑走路の飛行機から目を離せないでいた。

「あ、とぶとぶ。浮いた!」

すごい。ロープも何もないところでヒコーキは浮いて、やがて空へと消えていった。

「ムジャキだな、ははは」

「だって、すごいじゃないですか。鉄ですよ、鉄の塊が飛んでるんですよ」

「うん、すごいね」

にこにことしながら、渡海さんはヒコーキの方ではなく、私を見ている。

その視線に気づいて私はどきっとしてしまう。

単に、渡海さんが格好いいからなのか。

それとも、私――好きになっちゃったのかな。

初デート(?) だからうかれてるのかな、私。

と私はいくつか停泊しているヒコーキを、今度はぼんやりと眺めながら、とくとくとリズムを刻む胸の動悸を感じていた。
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