オヤスミナサイ~愛と死を見つめて~
夢くんは、満面の笑みで応える。

「……じゃあ、私はこれで。気をつけて帰ってくださいね」

「うん、ありがとう」

そして、鈴はしばし夢くんを見つめる。

その瞳には、光るものがあった。

ぐすん、と鈴は洟をすする。

泣いているようだった。

「じゃあ、さよなら」

踵を返すと、彼女は部屋に戻って行った。

あの涙は演出? それとも、こころからの涙?

真意は解らないけれど、夢くんはきっぱりと私だけだ、と言ってくれた。

それだけで、胸が高鳴る。

「……いいの? 鈴、泣いてたよ」

「えっ? 泣いてた? 気づかなかった」

「泣いてたよ。ちょっぴり。やっぱり夢くんに気があるんだね、鈴」

「そうか……」
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