オヤスミナサイ~愛と死を見つめて~
ふらっ、とそこで私は倒れてしまった。

「危ないなぁ……どれ」

そう言って、夢くんは屈んで、背中を見せてくれた。

「え?」

「おぶってあげる」

「え、いいよ。恥ずかしい」

「大丈夫。暗がりで見えないよ」

「私、重いし、夢くん、具合悪くなっちゃうよ?」

「大丈夫。ほら」

優しい夢くんの誘いに、私は素直に従うことにした。

ちょっともたれかかると、夢くんは、よっ、と声を出して私を持ち上げた。

「やっぱり恥ずかしい……」

「いいって。いいって。ほら、ちゃんと掴まらないと落ちるよ」

「うん……」

私は夢くんの肩に手を回した。

おんぶされるのなんて、ちいさい頃にお父さんにやってもらって以来だ。
< 326 / 350 >

この作品をシェア

pagetop