オヤスミナサイ~愛と死を見つめて~
それで、ああ。夢くんは。

――たぶん、いい方向に向かっていないんだということを悟った。

『梨聖ちゃん。現実を、全て受け入れる覚悟あるかしら』

低いトーンでお母さんは言った。

私は無言でうなずいた。電話越しでもそれを察してか、夢くんのお母さんは続けた。

『いいわ、迎えに行くわね。待ってて』

そう言って、電話は切れた。

とっておきの服を着ていこう――。

私は真っ白なセーターを出し、フリルのついたエンジとブラックの格子型のロングスカート。

黒いロングコートに茶色のブーツ。

夢くんと2人で家にいる時は、私、トレーナーにGパンか、もしくはパジャマ姿だった時が多かったから。

今日は、ちゃんと化粧をして、夢大ママが来るのを待った。

ケータイが鳴り、アパート前にお母さんが来たことを知らせた。

夢くんが入院してから会うのは初めてだ。
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