オヤスミナサイ~愛と死を見つめて~
目尻に笑いジワをつくって、お母さんは、

「かわいらしい服ね。やっぱり女の子はいいわね」

と言った。

お母さんが運転して、私は後車部に乗った。

「日に日に寒くなって、厭ね。冬はキライではないのだけれど」

「そうですね。もうお米研ぐ水とか冷たいですよね」

「朝晩の犬の散歩も、寒いわ。犬はそんなの関係なく散歩ではしゃいでるけれどね。ふふ」

車内では他愛ない言葉が続いた。

病院は、日曜日のせいか閑散としていた。

外来に来る患者さんもいないし、どこかゆるやかな空気が流れていた。

ただのぜんそくなんかじゃない――うすうす気づいてはいたものの。

案の定、夢くんのお母さんに連れ立って来られたのは循環器科だった。

循環器……心臓の病気――。

私はサーっと血の気がひくのを感じた。

病室に入る前に、廊下にそなえつけてあった消毒液で手を清め、4人部屋の夢くんの元へ近づいていった。
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