オヤスミナサイ~愛と死を見つめて~
「なんなら今度、着てこようか、うふふ」

「ははは。患者と間違われちゃうよ」

軽く笑って、夢くんは窓の外を見た。

晩秋の午後。

あたたかくて、やわらかいけれど、どこか切ない日の光。

私は彼の横顔に話しかけた。

「ねえ、夢くん。ただのぜんそくなんかじゃ、ないんでしょ」

「――」

「心臓の病気なんだね」

「――」

「……もう……残ってる時間は、少ないんだね」

私は、ちらちらと気になっていたことを、一気に口にした。

最後にぶつけた質問から、しばし――いや、たっぷりと時間があり。

夢くんは、窓の外を見たまま、

「――そうだよ」

と、言った。
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