オヤスミナサイ~愛と死を見つめて~
いよいよ夕暮れ時になった。

駐車場に止めていた渡海さんの車にはほんの少し翳り(かげり)が見えた。

しばらく待ちぼうけをくらって、淋しかったのかな。

私は彼のインテグラをそっとなでた。

もう、これでお別れかな?

それとも、また会えるかな?

「はははっ、何なでてんの?」

車に乗り込もうとしていた彼は、私の行動を見ていたらしく、そんな私の行動を笑った。

「いや、――カワイイですよね、車って」

「ああ、うん。そうだね。人格持ってるよね」

「そうですね」

私たちはそう話をしながら、車に乗り込んだ。

「俺、よく車に向かって話しかけるよ」

シートベルトを締めながら彼は言った。

「どんなことですか?」

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