オヤスミナサイ~愛と死を見つめて~
夕闇に翳った渡海さんの顔。

何だか切ないよ。

「それとも、お腹すいた?」

私ははっとして彼を見た。

そして、大きく、こくん、と首を縦に振った。

「――プッ」

すると彼は私を見て吹き出した。

「な、なんで笑うんですか」

「解り易いね、キミって。――だけど俺も同じ気持ちだよ。少し淋しいよね」

渡海さん――。

渡海さんは、真っすぐ前を見て、怒ったように真顔になっている。

どうしたのかな? と思ったけれど。暗がりの中でも彼の耳が真っ赤だった。

――照れてる!?

カワイイ!!

自分の吐いたセリフに、照れてる!

私は慌てて、ほころびそうになる口を両手で覆い、サイドガラスの方向を向いた。
< 37 / 350 >

この作品をシェア

pagetop