オヤスミナサイ~愛と死を見つめて~
うわ。私、今胸がきゅんきゅん鳴ってる。

気まずいけど、甘ずっぱい雰囲気が車内に漂よった。

状況を察してか、渡海さんはウィンドウをほんの少しあけた。

冷たい空気の中に、キンモクセイの香りがブレンドされて運ばれてきた。

秋だなぁ。

秋なんだなぁ。

私が窓におでこをくっつけていると、渡海さんはごほん、と咳払いをして言った。

「軽く、マックでも行こうか」

「あ、はい……」

そう返事して思わずふり返って彼を見た。

するとまた目が合って。

運転中の彼はすぐさま前を向いたけれど、また、二人で答い合った。

やがて、国道沿いのマックに入った。

もうすでに日は落ちて、辺りはグレーのベールがかけられたかのようだった。
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